百人一首の虫 -鬱蒼とした森から奏でる31音- その1.
以前のブログでの宣言通り、私こと「か め🐢」による百人一首の歌考察シリーズ、その名も「百人一首の虫 -鬱蒼とした森から奏でる31音-」始めました。今回は第1弾。5首ずつアップして全部で20弾までアップしていく予定です。
歌考察というより、古典文法を駆使して歌の意味を味わうのがコンセプトだったりします。高校で習うので、小中学生には難しい?…かもしれません。私も10年以上ぶりに古典文法の知識を引っ張り出して、ブログを書きながら学んでいる次第です。
↓その時のブログはこちら。
しばらくの間、どうか お付き合いくださいませ。
-イントロダクション-
いまから七百数十年前、当時、最高の歌人だった藤原定家が十冊の和歌集の中から一人一首ずつ百首選りすぐったものが、小倉百人一首。
そこには四季の美しさ、人間の悲しみ、喜び、恋の悩みが鮮やかに描かれています。私たちのこころのふるさとであるこの百首について、成り立ちから味わいまで田辺聖子がわかりやすく解説した楽しい入門書。
裏表紙あらすじより引用
1. 秋の田の かりほの庵の…
秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ
わが衣手は 露にぬれつつ
【意味】
みのりの秋の田。鳥・けものにあらされぬよう番をする、仮小屋。その屋根の苫 (草で編んだむしろ) の目があらいので、もれる夜露に私の袖はぬれてしまった。
p.17 より引用
百人一首の中では、1番目に出てくる歌。この句のポイントは2点。
(1) 「かりほ」
「かりほ」は掛詞で、「仮庵」「刈り穂」の2つの意味があること。
(2) 「苫をあらみ」
「苫をあらみ」とは「苫があらいので」という意味。
「『あらみ』はイ段 (母音が「i (い)」で終わる音) なのに、なぜ已然形 (「いぜんけい」と読みます。) *1 の意味??」
…と疑問に思ったので、文法を紐解いていくことにします。
↓以下のサイトを参考にしました!
「あらみ *2 」の「あら」は、形容詞ク活用 *3 の語幹、「み」は原因を意味する接尾語です。これは私も初めて知りましたが、百人一首の世界では「をみ構文」なるものがあるそうです…!!構文て英語やん…(笑)
↓その公式は、以下のようになっています。(今度は数学ちっくだ!)
「A(名詞)をB(形容詞の語幹)み」→「AがBなので」
∴「苫をあらみ」=「苫があらいので」という意味になるのです…!!
後に出てくる「瀬をはやみ」も、この「をみ構文」が適用されます。
最後に この歌、作者の天智天皇 *4 が農民の苦労を思って詠まれた歌だと伝えられています…。
2. 春すぎて 夏来にけらし…
春すぎて 夏来にけらし 白妙の
衣ほすてふ 天の香具山
【意味】
はや、春もすぎて夏がやってきたらしい。夏になると天の香具山には、夏のならわしとして白い衣を干すというが、夏山に、あれ、あのように白い衣がさわやかに干されている。
p.24 より引用
3. あしひきの 山鳥の尾の…
あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の
ながながし夜を ひとりかも寝む
【意味】
山鳥の長々とたれた尾のように、長い秋の夜をわたしは一人で眠るのか。山鳥は夜は雄と雌、谷をへだててべつべつに眠るというけれど、そのようにわたしも。……
p.27 より引用
4. 田子の浦に うち出でてみれば…
田子の浦に うち出でてみれば 白妙の
富士の高嶺に 雪は降りつつ
【意味】
田子の浦にたたずみ、見わたせば、真っ白い富士の高嶺に、今しも雪は降りつづいている。……
p.30 より引用
5. 奥山に 紅葉ふみわけ…
奥山に 紅葉ふみわけ 鳴く鹿の
声きくときぞ 秋はかなしき
【意味】
深い山の奥、紅葉をふみわけて泣く鹿の声を聞くとき、秋のあわれはひとしお、身にしみて感じられる。
p.33 より引用
当会の会長イチオシの歌です (笑)。
-まとめ-
意外とガッツリ解説するのは大変でして、1首目の「あきの」から完全に燃え尽き症候群と化しました (笑)。流石に100首全部を「あきの」と同じエネルギーで解説するのは、時間も集中力もゴッソリ奪われる気しかしません。これに懲りたので、次回からは5首に1首くらいの割合でガッツリ解説していこうかと思います。。。
若しくは 夏休みの宿題的な感じで、気が向いた時にリライトするかも (?) しれません。