呉かるた会

呉かるた会会長の、ノホホな徒然日誌

百人一首の虫 -鬱蒼とした森から奏でる31音- その4.

私こと「か め🐢」による百人一首の歌考察シリーズの第4弾です。歌考察というより、古典文法を駆使して歌の意味を味わうのがコンセプトだったりします。高校で習うので、小中学生には難しい?…かもしれません。私も10年以上ぶりに古典文法の知識を引っ張り出して、ブログを書きながら学んでいる次第です。

しばらくの間、どうか お付き合いくださいませ。

 

↓第1弾のブログはこちら。

kure-karuta.hatenablog.com

↓第2弾のブログはこちら。

kure-karuta.hatenablog.com

↓第3弾のブログはこちら。

 

kure-karuta.hatenablog.com

 

16. たち別れ いなばの山の…

たち別れ いなばの山の 峰に生ふる

まつとし聞かば いま帰り来む

【意味】

さあ、お別れです。わたしは因幡 (鳥取県) に赴任しますが、因幡の国は、松の場所の稲羽山、その峰の松ではないが、みなさんが待っているとおっしゃるならすぐに帰ってまいります。

 

田辺聖子 著「歌がるた 小倉百人一首」(角川文庫)

p.62 より引用

 

17. ちはやぶる 神代も聞かず…

ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川

からくれなゐに 水くくるとは

【意味】

ふしぎなことが多くあったという神代にもまだ聞かない、大和 (奈良県) の竜田川の美しい紅葉。まるで紅のしぼり染め。川面いちめんの紅しぼりをひろげたよう。……

 

田辺聖子 著「歌がるた 小倉百人一首」(角川文庫)

p.68 より引用

 みんな大好き (?)「ちはやふる」のモトとなった歌。

 

 ↓今回も、以下のサイトを参考にしました!

from2ndfloor.qcweb.jp

 

なかなかトリッキーな歌なので、例によって品詞分解して意味を紐解いていくことにします。後に解説予定の「あらしふく~」のように、紅葉といえばたいてい、「錦のよう」だと例えられることが多いです。しかし この歌は、「くくる (括る) 」に「染色」の意味をもたせています。つまり 作者の在原業平朝臣は、川面の紅葉をしぼり染めに見立てたオリジナリティー溢れる歌を詠んでいたのですね。

 

18. 住の江の 岸に寄る波…

住の江の 岸に寄る波 よるさへや

夢の通ひ路 人目よくらむ

【意味】

住の江の岸による波。そのよるの夢路にさえ、きみは人目をさけてぼくと逢ってはくれないのだろうか。昼はもちろん、夜の夢にさえおとずれてくれないんだもの。

 

田辺聖子 著「歌がるた 小倉百人一首」(角川文庫)

p.74 より引用

 

19. 難波潟 みじかき蘆の…

難波潟 みじかき蘆の ふしの間も

逢はでこの世を すぐしてよとや

【意味】

難波の海辺に生いしげる蘆。その中の短い蘆の、節と節のあいだはとても短いわ。そんな短いあいだでさえ、逢ってくださらないの? 逢わずにこのまますごせとおっしゃるの?

田辺聖子 著「歌がるた 小倉百人一首」(角川文庫)

p.77 より引用

 

20. わびぬれば 今はたおなじ…

わびぬれば 今はたおなじ 難波なる

みをつくしても 逢はむとぞ思ふ

【意味】

あなたにもう逢えない。恋しくて物狂おしい日々。ええい、こうなったら、難波のみおつくしではないが、身をつくし、破滅してもあなたに逢いたい。逢わずにおくものか。

 

田辺聖子 著「歌がるた 小倉百人一首」(角川文庫)

p.80 より引用