呉かるた会

呉かるた会会長の、ノホホな徒然日誌

百人一首の虫 -鬱蒼とした森から奏でる31音- その8.

私こと「か め🐢」による百人一首の歌考察シリーズの第8弾です。歌考察というより、古典文法を駆使して歌の意味を味わうのがコンセプトだったりします。高校で習うので、小中学生には難しい?…かもしれません。私も10年以上ぶりに古典文法の知識を引っ張り出して、ブログを書きながら学んでいる次第です。

 

しばらくの間、どうか お付き合いくださいませ。

 

↓第3弾のブログはこちら。

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36. 夏の夜は まだ宵ながら…

夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを

雲のいづこに 月宿るらむ

【意味】

夏の夜の短いこと。まだ宵のうちと思っていたのに、はや白々と明けてしまった。

月は山の端にかくれるひまもなく、雲のどのあたりに宿っているのだろうか。

 

田辺聖子 著「歌がるた 小倉百人一首」(角川文庫)

p.117 より引用

 

37. しらつゆに 風の吹きしく…

しらつゆに 風の吹きしく 秋の野は

つらぬきとめぬ 玉ぞ散りける

【意味】

秋の野の草むらにいちめんの白露。風がしきりに吹くと、ぱらぱらと露はこぼれる。

糸を通してつなぎとめていない玉が散ったように……

 

田辺聖子 著「歌がるた 小倉百人一首」(角川文庫)

p.119 より引用

 

38. わすらるる 身をば思はず…

わすらるる 身をば思はず 誓ひてし

人のいのちの 惜しくもあるかな

【意味】

あなたに忘れられるわたしのことは、なんとも思わないわ。でも神仏にかけて心は変わらないよと約束したあなたに、心変わりしたバチが当たって命がちぢまるのじゃないかと心配だわ。

 

田辺聖子 著「歌がるた 小倉百人一首」(角川文庫)

p.121 より引用

 

39. 浅茅生の 小野の篠原…

浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど

あまりてなどか 人の恋しき

【意味】

丈ひくいチガヤの小野に生える篠竹、その「しの」のように、ぼくはしのんでこらえているけれど、思いあふれる恋心、なぜこうまであの人が恋しいのか。

 

田辺聖子 著「歌がるた 小倉百人一首」(角川文庫)

p.123 より引用

 

40. 忍ぶれど 色にいでにけり…

忍ぶれど 色にいでにけり わが恋は

ものや思ふと 人の問ふまで

【意味】

ぼくは自分の恋をじっと心におしかくしていたが、しぜんに顔や態度に出たのかしら、「きみは恋をしているんじゃないか、もの思わしげに見えるよ。」と人にいわれてしまった。

 

田辺聖子 著「歌がるた 小倉百人一首」(角川文庫)

p.125 より引用

 

この歌の作者は平兼盛。今年4月に観た映画「ちはやふる -結び- 」のラストシーンでも取り上げられた歌の1つであり、西暦960年当時の文学史上きわめて大きな歌合わせ *1 事件にもなった歌の1つでもある。先行・右方の兼盛が「しのぶれど~」と詠み上げる。あまりの美しさに大衆の歓声や大喝采が響いた次の瞬間、

 

しばらく。しばらくお静かに。左の歌をお聞きください。」と、審判の一声で一座は静まる。

 

そして、次の41番・壬生忠見 (みぶのただみ) の歌が詠み上げられるのだった…。

↓ 「しのぶれど~」に続く記事はこちら。

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*1:その当時の一流歌人が選ばれ、左右に分かれて歌を詠み、その勝ち負けを争うイベントである。