百人一首の虫 -鬱蒼とした森から奏でる31音- その9.
私こと「か め🐢」による百人一首の歌考察シリーズの第9弾です。歌考察というより、古典文法を駆使して歌の意味を味わうのがコンセプトだったりします。高校で習うので、小中学生には難しい?…かもしれません。私も10年以上ぶりに古典文法の知識を引っ張り出して、ブログを書きながら学んでいる次第です。
しばらくの間、どうか お付き合いくださいませ。
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41. 恋すてふ わが名はまだき…
恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり
人しれずこそ 思ひそめしか
【意味】
ぼくが恋になやんでいるといううわさは、もうはや、世間に立ってしまった。ぼくはあの人を、人しれず愛しはじめたばかりというのに。……
p.129 より引用
前回ブログの「しのぶれど~」の歌合わせ対決にて、後攻で詠まれた歌。作者は壬生忠見 (みぶのただみ) 。
両者とも、忍ぶ恋 (こっそり心に秘めた恋) を歌い、甲乙つけ難い歌合わせとなった。
審判は、左大臣の藤原実頼 (ふじわらのさねより) *1 だが、どちらとも決められず、困ってしまった。
そばにいた閣僚の一人、源高明 (みなもとのたかあきら) は、天皇が兼盛の「しのぶれど~」を口ずさまれたのを伺い、そのことを実頼に耳打ち。実頼は、右方 *2 の勝利と宣言した。
しかし 実頼の本心は「引き分けかな…?」と考えていた。
「恋すてふ~」*3 の壬生忠見は、貧しい家柄、低い身分の役人出身であるが、歌がうまいと評判だった。その為、歌合わせで負けを知らされた時は、ショックで食べ物が喉を通らずに生涯を終えてしまったという。
…死を掛けた美しい歌だけが、後へ残った。
のちに、2種並べて「百人一首」となり、現在に伝えられている。
42. 契りきな かたみに袖を…
契りきな かたみに袖を しぼりつつ
末の松山 波こさじとは
【意味】
おぼえているかい。約束したよね、ぼくたち。けっして心変わりしないと。あの末の松山を波が越すようなことはけっしてないって。
p.132 より引用
<末の松山> とは、宮城県にある地名。「愛媛県松山市」のことではない。
因みに 余談だが、この歌を詠み上げる時「末の松山」は、「すえのまつやまー」と7文字で言い切らなければならない。
43. あひみての のちの心に…
あひみての のちの心に くらぶれば
昔はものを 思はざりけり
【意味】
恋がむくわれたと思ったら、かえってもの思いがふえた。せつない気持ち、そして不安、嫉妬……新しい恋の苦しみ、こうしてみると昔のもの思いはもっと単純だった。……
p.134 より引用
44. 逢ふことの 絶えてしなくは…
逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに
人をも身をも 恨みざらまし
【意味】
もし、きみに逢うことがまったくなかったならば、きみを恨んだり、自分をつらがったりすることもなかったろうに。……なまじっか、たまに逢うために、つのる苦しみ。
p.136 より引用
45. あはれとも いふべき人は…
あはれとも いふべき人は 思ほえで
身のいたづらに なりぬべきかな
【意味】
ぼくのことを、かわいそうだといってくれる人はいやしない。きみは心変わりして冷たくなってしまった。ぼくはこのまま、むなしくこがれ死ぬにして消えてゆくのか。
p.138 より引用